優れた芸術は、捉えがたい「世界」をわれわれの目の前に差し出してくれます。爽やかな風が吹き抜ける緑なす田園を、うす雲がたなびく深遠な山々を、夕陽に赤く染まり刻々と姿を変える峰々を、樹々のざわめき、水のせせらぎ、自然の原初的な生気と官能的ともいうべき息吹を、様々な場所で様々な趣をした人々の表情や営みを、そして何よりも、超自然なものに注ぐ限りなく熱い想いを・・・自己と他者を取り巻くすべての森羅万象が凝縮されて、そこに「いのち」の営みが立ち現れている。優れた芸術は、「世界」への認識を一掴みにして、われわれの胸を震わせてくれるのです。

 

① 風景描写の中に

庭園図、第二様式、前20年頃、イタリア、プリマ・ポルタ、リヴィアの別荘出土、フレスコ、幅595cm、ローマ、国立博物館

 

ヨハネス・フェルメール、デルフト眺望、1660〜61年頃、カンヴァス、油彩、98,5×117,5cm、デン・ハーグ、マウリッツハイス美術館

 

ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー、ノラム城 日の出、1845年頃、カンヴァス、油彩、90,8×121,9cm、ロンドン、テート・ギャラリー

 

ポール・セザンヌ、サント・ヴォクトワール山とシャトー・ノワール、1904〜06年、油彩、カンヴァス、65,6×81cm、アメリカ合衆国、フィラデルフィア美術館

 

ファン・ゴッホ、花咲くアーモンドの木の枝、1890年、カンヴァス、油彩、73,3×92,4cm、アムステルダム、ゴッホ美術館

 

② もの言わぬ事物の中に

カラヴァッジョ、果物籠、1598〜99年頃、カンヴァス、油彩、46×64,5cm、ミラーノ、アンブロジアーナ絵画館

 

ファン・サンチェス・コターン、食用アザミのある静物、1603〜04年頃、カンヴァス、油彩、63×85cm、グラナダ美術館

 

フランシスコ・デ・スルバラン、レモン、オレンジ、茶碗、1633年、カンヴァス、油彩、60×107cm、アメリカ、パサデナ、ノートン・サイモン美術館

 

ジャン=シメオン・シャルダン、野苺の籠(木いちごの籠)、1761年、38×46cm、油彩、カンヴァス、個人蔵

 

ポール・セザンヌ、コンポートのある静物、1882年、油彩、カンヴァス、46cm×55cm、個人蔵

 

ヴィンセント・ファン・ゴッホ、古靴、1886年、カンヴァス、油彩、37,5×45cm、オランダ、ファン・ゴッホ美術館

 

③ 人間存在の中に

書記座像、第4あるいは第5王朝(前2600〜前2350年)、サッカラ、セラペウムのスフィンクス参道北出土、石灰岩の彫刻に彩色、目には象嵌細工、水晶、マグネサイト(炭酸マグネシウム)、ヒ素含有銅乳首、木、高さ53,7、幅44cm、奥行き35cm、パリ、ルーヴル美術館

 

ラファエッロ・サンティ、バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像(部分)、1514〜15年頃、板、油彩、82×67cm、パリ、ルーヴル美術館

 

ディエゴ・ヴェラスケス、矮人エル・プリモの肖像(部分)、1644〜45年、カンヴァス、油彩、107×82cm、マドリード、プラド美術館

 

レンブラント・ファン・レイン、34才の自画像(部分)、1640年、板、油彩、102×80cm、ロンドン、ナショナル・ギャラリー

 

ヴィンセント・ファン・ゴッホ、自画像(部分)、1889年、カンヴァス、油彩、65×54cm、パリ、オルセー美術館

 

パブロ・ピカソ、青の時代の自画像(部分)、1901〜1904年、パリ、ピカソ美術館

 

④ そして神々への畏敬の中に

デルフォイの御者(部分)、前478〜474年頃、ギリシア、デルフォイ出土、ブロンズ、高さ180cm、デルフォイ考古美術館

 

美しき絵ガラスの聖母(部分)、シャルトル大聖堂、内陣南側廊、1180年頃(?)、フランス

 

ジョット、キリスト伝:キリストの逮捕 (部分)、スクロヴェーニ礼拝堂壁画、1304〜05年、200×185cm、フレスコ、パドヴァ、スクロヴェーニ礼拝堂

 

フラ・アンジェリコ、リナイウオーリ祭壇画(部分)、1433〜35年頃、板、テンペラ、中央パネル233×133cm、両扉292×88cm、プレデッラ各39×56cm、フィレンツェ、サン・マルコ美術館

 

ピエロ・デッラ・フランチェスカ、復活のキリスト、1465年頃、壁画、フレスコ、225×200cm、サンセポルクロ、市立美術館

 

左 レオナルド・ダ・ヴィンチ、聖アンナと聖母子(部分)、1512年頃、板、油彩、168,5×130cm、パリ、ルーヴル美術館右 伝 郭熈筆、水墨画(部分)、北京、故宮博物館